アナザーストーリーズ 運命の分岐点 「浅田真央 伝説のソチ五輪 〜生涯最高得点の真実〜」

アナザーストーリーズ 運命の分岐点 「浅田真央」

僕はかつて一度、浅田真央さんと目が合ったことがある。
これは2年間言えなかったのだけど、もう時効だと思うから言う。
2年前、同じアナザーストーリーズで「宿命のトリプルアクセル」という回を演出した時、
荒川静香さんが練習していたリンクで、直前に練習していたのが浅田さんだった。
その時はソチ五輪後の休養明け、復帰戦に臨もうとしていた時期。
練習を終え、リンクから上がってきた浅田さん。
テレビ屋のヤマっけ(撮りたい・・・)が起こらなかったとは言わないが、
それは事前からの約束で、もちろんカメラは向けない。
むしろそんなことより印象に残ったのは、浅田さんとすれ違った一瞬だった。
僕が何の気なしに振り向くと、浅田さんも振り向いて、こちらに向けてニコッと微笑んでお辞儀をしてくれた。
それだけ、目が合ったのはほんの5秒程度だけど、僕はその時に「ああだからこの人はこれだけ好かれるんだ」と
一目で合点した。

トップアスリートの人には独特の距離感があって、
今回取材した「皇帝」プルシェンコさんはこちらの質問など見透かしてその上を行く、絶対に立ち入らせない圧巻の距離感。
と思えば僕が今回の取材で大ファンになってしまったソトニコワさんは
僕が質問している間は僕の方をまっすぐ見て、表情から汲み取ろうとしてから、コーディネーターの翻訳中にはもう話し出す、
そんなスピードと熱のある距離感。
そしてフィギュアスケートファンなら誰もが知る名コーチのタラソワさんは
相手が誰だろうと情熱直球100%の距離感。
・・・もうみんな魅力的だったのだが、浅田さんと目の合った5秒は、適切な言葉かわからないが、
ジャンヌ・ダルクに逢ったような、そんな感覚を覚えた。引き寄せられた。

それから2年。
前回の「宿命のトリプルアクセル」編はフィギュアスケートファンの方にもたくさん見ていただき、
僕を直接知る人はあそこが良かったと褒めてくれたりもしたが、
インターネット上ではファンの方の評判は決して芳しいとは言えなかった。
もっとこう言う瞬間を取り上げるべきだ、もっとこう言う人に話を聞くべきだ、、、
一つ一つがもっともだと反省しながら、「次」を伺っていた。

今回の企画が思いついたのは今年(2017年)の4月。
浅田真央さんの引退会見を聞いた日。
最も印象に残っている演技は?と言う問いに、礼儀(彼女の重要な魅力)を含めた逡巡を見せつつ、
「やっぱり、ソチのフリー」と答えた。
・・・これを聞いた時、僕はこのテーマを今年中にやらなければならないと思った。
浅田さんはたくさんの演技をしてきた。
メダルだけならバンクーバーの方で取っている。
でも、「やっぱり、ソチのフリー」。
あの演技はどんな時に観たって僕は涙するし、誰に聞いたってそうだと言う。
そして「記録より記憶」の典型のように語られるけど、それだけでなく、実際に浅田さんのフリー最高得点を叩き出している。
「記録と記憶」を併せ持ったあの4分を、今年、彼女が「やっぱり」と言った音の響きが聞こえるうちに、やらないと。

そう思って制作した今回。
僕はいつも以上にインターネットの評判をドキドキしながら待っている。
2年前の経験と、2年間の経験とを含めて、渾身で取材した。
プルシェンコ、ソトニコワ、タラソワととっておきの三人に話を聞くこともできた。
番組の中で4分の演技を丸々ノーカットで放送することも、早々に決めた。

ぜひ、ご覧頂ければ幸いです。
(阿部修英)

番組ホームページはこちら

ナビゲーター

沢尻エリカ

ナレーション

濱田 岳

演出 

阿部修英

演出補

斎木恵那

プロデューサー

髙城朝子

ゼネラルプロデューサー

田中直人