ディレクター 宇都 浩一郎
2000年テレビマンユニオン参加。20代から30代にかけて『世界ウルルン滞在記』を22本演出。その後は、〔紀行〕〔人物密着〕〔歴史〕〔音楽〕〔科学〕などジャンル・硬軟を問わず100本以上の番組をディレクション。テレビ以外にも、上海万博のイベント演出や、Yahoo!ニュースのウェブコンテンツ制作などさまざまなプロジェクトに参画する。
テレビマンユニオンの採用試験でエントリーシートに書いた“私のモットー”を、この文章のタイトルにしてみました。
「なぜ、テレビの世界に入ったんですか?」と問われた時は、こう答えることにしています。「雑食な性格が、テレビっぽいかなと思いまして。」
僕は映像やメディアの勉強をしてきたわけでもなく、人並みに、テレビも好き、映画も好き、音楽も好き、演劇も好き、読書も好き、旅も好き、そんな平凡な学生でした。突出した専門性があれば、就活では目立てます。売りになります。
専門が無いことは、僕のコンプレックスでした。大学の学部は【総合人間学部】…何でもありの分野横断的バラエティーを謳う新設学部でした。つまり大学受験時にも専門分野を決めなかった。そして学生生活を通じて、モラトリアムを謳歌しちゃった。じゃあもう開き直ろう。雑食上等。「専門分野はありません。いろんなものを好きになります。時々、深みにはまります。」
――そんなやつを、テレビマンユニオンは仲間に入れてくれました。
いま就活真っただ中のみなさんは、自分の売りは何だろうと自問自答していることと思います。「やばいなあ、別にこれといって売りとかないなあ」という僕のような方々も少なくないと思います。そんなみなさんに、肩の力を少しでも抜いてもらえればと、曲がりなりにも20年近くテレビ番組を中心に仕事をしてきた経験から「この仕事、どんな人が向いているんだろう」と考えながら綴ってみます。
ものすごくシンプルに結論から言うと、「面白がる力」と「伝える力」。
この2つを、自分はどのくらい持っているのか考えてみてください。
どちらかでも自信があれば、この仕事、一生楽しめる…かもしれません。
まずは、「面白がる力」。
森羅万象を相手に面白がるのが仕事です。だから雑食で全然OKなんですが、ただ手広いだけの「何でも屋」とは、ちょっと違うんです。
今取材している題材や人物について、その都度、「専門家」になる覚悟が必要不可欠なんです。その世界の住人の気持ちにちょっとでも近づきたいから。情熱やプライドにシンクロしたいから。理解するなんておこがましいけれど、せめて想像し感じ取るヨスガをつかみたいから。毎回手さぐりで悩みもがいて相手に近づこうとします。「自分の頭で、自分の気持ちで面白がる」ことができないと、通り一遍の番組にしかなりません。「何でも面白がる」こと、「何かを面白がり続ける」こと、これ実は、けっこう気力や体力が必要なんです。だからこそ、「面白い」と思ったことが「伝わった」時の喜びは何にも代えがたいんでしょう。
では「伝える力」って何だろう。
これはテクニカルな上手い下手ではないのかもしれない、と思っています。センスが良く、立て板に水のような語り口でも「伝わってこない」番組がある。逆に、とても訥弁なんだけど「伝わる」番組もある。実は「伝える力」なんてものは幻想で、「伝わる」深度まで辿り着く精神力、つまり「どのレベルで面白がるか」が大事なんじゃないかと思います。
言い換えると、「広く浅く」面白がっているだけじゃ、毒にも薬にもならないんです。クイックに「へぇー」と言える“雑学”だけ並べても、次の瞬間消えていく。テレビは、次の瞬間消えていく現在にすぎないことは百も承知で、それでも記憶に残るものを作りたい。…そう考える作り手がテレビマンユニオンには多いと感じます。深みに達し、分かりやすく伝えよ。そんなソフトが、世の中をちょっと面白くするのだ…そんな気概に満ちています。
20年前、“私のモットー”に「深く」と付け足していなかったら、僕は今頃ここにいなかったんだろうと思います。
あなたの好奇心の「幅」と「深さ」をテレビマンユニオンにぶつけてください。
あなたの好奇心が「テレビ番組」に収まりきらない時は、新しい枠組みを一緒に考えたい。そんな仲間が待っています。