ディレクター 伊藤 綾乃
1994年東京生まれ。2018年テレビマンユニオン参加。
ABEMA『私たち結婚しました』シリーズ等の演出を担当。
私はいたって普通の変人のようです。
学生のときまでは、かなり真面目に生きてきたと思います。宿題もためずにコツコツやるし、何かをするときは計画を立てて、きちんと、きちんと。きっちりやらないと認めてもらえないと思っていたのかもしれません。でも、常に「こんなのつまらない」「不真面目に生きたい」と心が訴えているのが分かりました。
2018年の4月にここにやってきました。
初めての景色ばかりで、相変わらず「真面目から抜け出せない私はただ必死に目の前のやるべきことと向き合おうとしました。面白いひとがたくさんいて、自分はなんてつまらないんだと日々感じていました。しかし数か月経って、先輩や同期にあることをよく言われるようになりました。
「変人だよね」「面白いね」
何てことだ、と思いました。
私があれほど嫌がっていた自分の「普通」が私でないひとからすれば「変」だったのです。私には、私の何が「変」なのかまだよく分かりません。でも、世の中であれほどみんなが模索する個性というものは、自分なりに精一杯生きるだけで十分獲得できるものなのだなぁと、何となく感じて何となく力が抜けました。
どんな将来を描けばよいのか、そこには誰がいるのか、分からなくて見えなくて、毎日不安で、でもやるしかない。とは思うけどなかなかベッドから起き上がれない。
こんなの普通のことなのですね。みんなが嫌う人や物が好き、あのひとがつまらないと思うものが自分には面白い。これも普通のことです。
私は「普通とは違うものを描きたい」と思ってこの業界を目指し始めましたが、普通でないものなんて無くて、ほんとうは全てが誰かにとっての普通なのだということに働き始めてから気づきました。 そう考えると、「誰かにとっての普通」を知らない人に伝えたり、普通を「見たことのないような形で」切り取ることが大事だと分かります。私の普通の人生はここに来てやっと始まった気がします。これからどんな風に面白く見せていこうか、考えてもがいてみようと思います。
自分のことがよく分からなくても、大丈夫です。ここにいるひとたちは、みんなあなたを面白がってくれます。もがいているひとを、踏み台にするなり何なりしてください。もちろん一緒にもがきたいひとも。待ってます。