ディレクター&プロデューサー 藤田 慎一
1997年、テレビマンユニオン参加。AbemaTV「恋愛ドラマな恋がしたい2」総合演出、NHK-BS1「世界はTokyoをめざす~母として挑む 女子柔道 松本薫」プロデューサー、MBS「ホムカミ」総合演出、ETV「オレアレ」演出など、主にバラエティ、ドキュメンタリーの演出、プロデュースを担当。
著書に番組から派生した「ぼくらはみんなハゲている」がある。
テレビマンユニオン20年目の藤田慎一と言います。主にテレビ番組の演出、時々、プロデューサーもしています。
学生時代は、社会学、社会福祉を専攻し、サークル活動では、フリーペーパーを作ったり、映画を作ったり、バンドをやったり、そして、休学をして農業をしたり、海外放浪をしてみたり、震災ボランティアをしたりしていました。そんな僕がテレビマンユニオンを選んだのは、正直、偶然かもしれません。当時、僕は就職活動を前にして、3つの道で悩んでいました。福祉の道か、農業の道か、メディアの道か。で、最も就職が難しそうな「メディア」にターゲットを絞って「とりあえず」、「ダメもと」で、就職活動を始めたのでした。とは言っても、大学3年生の3月まで休学をしていたので、大手メディアの採用試験のエントリーは、概ね終わっていて、好きだった深夜ドキュメンタリー番組のエンドロールで見つけた「テレビマンユニオン」という会社と、その他数社の制作会社の入社試験を受けることにした訳です。だから、テレビマンユニオンが、日本初の独立系制作会社であることも、メンバーシップ制度という世界でも稀有なシステムで会社が運営されていることも、創立メンバーたちが「お前はただの現在に過ぎない」という著書でテレビ論を論じた「テレビ界の寵児」だったことも、会社に人事部がないことも、社長を選挙で選ぶことも、メンバー全員が株主であり経営者であることも、今の僕が最も大切に思っている類のそんな全てのことは、採用試験が始まった後に知ったのでした。「全員が経営者で独立した制作者」「合議・対等・役割分担」…。初出社を前に、テレビマンユニオンが掲げる理念にドキドキしていたあの日々を、今でも昨日のことのように思い出します。
あれから20年。いつの間にか40歳を超え、結婚し、子どもも授かりました。頭は薄くなり、お腹も出てきました。驚くほどにいろんなことが変わりましたが、一つだけ変わらないことがあります。それは、入社前に感じていたあの「ドキドキ」です。それなりにおじさんになった今でも、ドキドキして足が震える瞬間があります。自分の妄想に興奮して眠れない夜があります。もちろん、この道を選んで一度も後悔したことがないかと問われれば、そんなことはありません。いや、寧ろ定期的に後悔しています。他人の歩む道がとっても魅力的に見えることは日常茶飯事です。自分の隠れた可能性をもっと活かせる場所が他にあるのではないかと妄想するのもいつものこと。会社を辞めようと思ったことも一度や二度ではありません。休みのない日々に疲労困憊した時代も、先行きの見えない将来や変動するメディア環境に挫けそうになったことも、自分の無能さに絶望したり、人間関係の軋轢に苦悩したり、味わったことのない屈辱を噛みしめたり、それはもう、思い出したくもないことがたくさんありました。でも、それを差し引いても余りある「ドキドキ」が、いつもその傍らありました。面白い企画を思いついて、いてもたってもいられなくなるあの瞬間。会いたい人に会う直前のあの瞬間。海外ロケで聞いたこともない土地に降り立ったあの瞬間。初めてディレクターを任されたあの瞬間。苦労して仕上げたVTRを誰かに見せるあの瞬間。頭の中で空想していた自分の企画が目の前で実現していくあの瞬間。時代を代表するスターやヒーローたちと一緒に番組を作り上げるあの瞬間。初めてレギュラー番組を立ち上げたあの瞬間…。テレビマンユニオンは、そんな「ドキドキ」をずっと抱えて歩む、子どものような大人たちの集団です。会社である以上、利益はもちろん大切ですが、テレビマンユニオンの最終目的は、利益じゃありません。制作者であるメンバーが、「ドキドキ」できる夢を実現させること。そのために最も適した環境、組織を作ること。会社であって会社じゃない。株式会社テレビマンユニオンは、仮の姿。テレビマンユニオンは、夢見る者たちの、夢見る者たちによる、夢見る者たちのための運動体なのです。その証拠に、そんな「夢」は、ほとんどジャンルを問いません。僕自身、この20年でNHK、民放5局、さらにBSや準キー局などほぼすべての局でテレビ番組の演出、プロデュースをしてきましたし、ジャンルもドキュメンタリーからスポーツ番組、ニュースやバラエティ、ドラマや歌番組など多岐に渡って経験してきました。媒体もテレビだけには限りません。DVD制作や、映画のメイキング、NPO活動の記録映像や、ネット動画コンテンツ、さらには「ぼくらはみんなハゲている」というドキュメンタリー番組から派生して、一般書籍の執筆まで経験しました。特に、書籍の執筆などは、ほとんど会社には利益が入らないにも関わらず、ほぼ1年間、執筆に専念させてもらいました。最終的な人事権が自分にあり、出来高制度であるからこそ、自分の生活費さえなんとかできれば、そして「創造」に関わる仕事でありさえすれば、自由にやりたいことに挑戦させてもらえる土壌がテレビマンユニオンにはあるのです。だから、会社には、映画をプロデュースしたり監督したりする者、芝居のプロデュースや演出をする者、イベントを企画する者、タレントマネージメントやコンサート制作をする者もいます。昨日までバラエティを作っていた人間が、翌日には、ドラマを撮っていたりします。それも、そういう部署に所属しているからそういう仕事しているのではなく、所属部署に関わらず、そういう仕事がしたいからやっているだけなんです。こんな会社、たぶん他にはないと思います。
このホームページにたどり着き、この文章を読んでいるような皆さんは、きっと押し寄せる仕事を日々こなしているだけの毎日では飽き足らないような若者に違いありません。そんな若者たちにこそ、ぜひ仲間になって欲しいと願っています。