ディレクター&プロデューサー 大西 隼
1980年生まれ。理学博士。2008年テレビマンユニオン参加。
<ディレクターとして>
NHK系:『地球タクシー』(プロデューサー兼任 / 現在までに全20編を担当), 新春特番『欲望の資本主義』(2017, 2018, 2019),『欲望の時代の哲学』, 『岡田武史とレジェンドたちが斬るFIFAワールドカップ』,『奇跡のレッスン』(サッカー編、テニス編、ラグビー編、バイオリン編),『アナザー・ストーリーズ 田中角栄編』,『ニッポンのジレンマ』,『大心理学実験』,『今そこにある未来 ヒト×AI=∞ 』。TBS『世界ふしぎ発見!』など。
<他>
2010年上海万博 日本館&アジア広場 制作アシスタント, 2012年 CX系 連ドラ『ゴーイング マイ ホーム』プロデュース補, 2015年 ドキュメンタリー映画『あえかなる部屋』助監督(兼制作プロデューサー)など。
東京生まれの次男坊です。
三つ子の魂はアメリカで育まれ、小学生になる前に帰国してからは、ずいぶんとゴツゴツした幼少期と青春期を過ごしたものです。「この世界があること、世界の中に自分がいること」が、ずっと不思議でした。
足が痛む日々。悩みが尽きない学生時代。サイエンスに光明を見出し、大学院で研究生活へ没入するものの、それでもやはり自我や存在への不思議が頭をもたげ、通称 "もやもや君"は、科学の世界では晴らすことができないことに思い至る。心身の暗黒時代を通り抜け、"もやもや" そのものをエネルギーとして生きていく方法を模索し続けていたころ、幸運な転機が訪れる。当時の彼女が思い悩む彼氏(僕のこと)への不安をバイト先の出版社で口にしたとき、ある年配の女性が言ったという。「その子、テレビマンユニオンがいいんじゃない?」彼女にそれを聞いた瞬間、「あ、テレビのエンドロールで見たことのあるカタカナだ」と符合した。
新人選考は、妙なものだった。
一風変わったお題の作文を書かされたり、「過去に存在しない映像」をテーマに取材をさせたり、キャンプ場で野外料理をチームで作らせたり。(でも、入社試験を受けたのはテレビマンユニオンだけだったから、当時はあまり妙だとは感じなかった。)選考試験の中で、自分が発した言葉をいくつか鮮烈に覚えている。それだけ強烈な問いかけをされたのだろう。(人生において、そのような記憶は他にあまり例がない。)
博士課程修了後、28歳になる年に、テレビマンユニオンの門をくぐった。
足の持病の度重なる手術で、1年目はほとんど病院か家で療養していた。大きな焦りがあったが、この時に受けた 心的・経済的サポートには、とても感謝しています。映像の世界は、サイエンスの世界とはかなり違う世界だと思う一方、かなり似ているところもあるなともも思います。
頭をひねり(あるいは感性を開いて)、企画を発想する。リサーチをし、いい撮影をし(いい実験をしてデータをとり)、編集する(論文を書きまとめる)。きっとどんな人生を歩んできた人でも、なにがしかのことに向き合いながらゴツゴツ生きてきた人は、きっとその力を発揮できる世界だと思います。
そしてテレビマンユニオンは、やはり妙な組織です。ガチガチなところもあれば、ぐにゃぐにゃなところもある。この世のあまねく組織において、完璧な組織は存在しないでしょう。でも、こんなにも一人一人が目一杯、自らの「つくる自由」のために、もがき続けている場はあまりないかもしれません。ぼくは、この組織の中でもうすぐ11年目。
変化と変貌を繰り返してきた自覚があります。でもいまだに心の根っこにあるのは、「存在」への不思議です。仕事と生きることが絡み合ってる感覚があるから、仕事が楽しいです。人は、変化をおそれるものでしょう。でも、僕はいつも変化することに対して、心を開いていたいと思います。謙虚に、真摯に、ラディカルに...変化し続ける覚悟と勇気。それでも変わらないゴツゴツや、もやもやを抱えて。
新しい人との出会いを、楽しみにしています。