是枝裕和監督の原点 TVドキュメンタリーを語る

是枝監督の映像表現の原点はTVドキュメンタリー、特に1991年に放送された「しかし…福祉切り捨ての時代に」と「もう一つの教育~伊那小学校春組の記録~」にある。その制作過程で、世界観・人間観・表現観を根底から鍛え直されたのだ。「しかし…」の取材開始時には、生活保護を打ち切られた犠牲者の視点から、役人を悪者としてしか捉えてなかった。やがて、環境庁の山内さんという弱者の側に立ち続けた人を知り「現実に負けた。自分の頭の中が」と痛感。そこにこそ取材の面白さがあることを発見したのだった。「伊那小」では、子供にカメラを向けるとはどういうことか、取材対象との関係とは…を骨身にしみて考え、体得していった。この2作共、会社を辞めるかという瀬戸際での制作だった。このシリーズ、将来是枝監督論を書こうとする人あれば、必見であろう。
(浦谷年良)

各日、番組に続けて放送予定
#1 3月24日(火)23:00~ しかし…福祉切り捨ての時代に
#2 3月25日(水)23:00~ もう一つの教育~伊那小学校春組の記録~
#3 3月25日(木)23:00~ 公害はどこへ行った…
#4 3月27日(金)23:30~ 彼のいない八月が
#5 3月28日(土)23:00~ シリーズ憲法~第9条・戦争放棄「忘却」

インタビュー・編集

浦谷年良