ゾウの眠る森はいま 密林ボルネオ 命の物語

ゾウの眠る森はいま 密林ボルネオ 命の物語

放送のお知らせ
2017年1月1日(日・祝)9:00~10:55

空港を降りると、まとわりつくような湿気と陽射しの暑さが出迎えるマレーシア、コタキナバル。バスを乗り継ぎ水分補給とばかりにお腹カポンカポンになるほど水を飲んだ。川岸の船着場で小さな船外エンジンのついたボートに乗り込む。大河はジャングルを貫くように悠然と流れている。ボートは川の真ん中をまっすぐに進む。高い樹木が続く川岸の緑の濃淡が多彩なパノラマの向こうに濃い青色の空がひろがり、遠くの入道雲が午後のスコールを予感させる。
ボルネオゾウを追い求めて、野生動物が持つ威圧感、迫力、凄みのようなものをどうしたら伝えられるかロケ中、苦悶し続けた。今回、リポーターも旅人もいない。現場であらためて実感する。状況説明、空気感に始まり体験することでの喜怒哀楽を言葉や動きで表してもらうだけで、いかに自分は楽をしてきたか。どれほど助けられてきたかということを。ある時、川べりの草むらの緑の中をうごめく灰色のかたまりが目に入った。近づくと足にけがを負ったまだ若いオスのゾウだった。足首に大きな傷口があり白く膿んでおり周囲が腫れているのが遠目でもわかる。傷ついて群れから離れてしまったのだろうと専門家は眉をひそめる。痛みがあるのか鼻先を時折丸めて水を吸い、傷口に吹きかけている。あとはひたすら草を食べ続ける。レンジャーに連絡してもらい治療を要請する。翌日も、そのまた翌日も私たちのボートの前にその傷ついたゾウは現れた。1トンを超える巨体を前にすぐに手出しのできない状況を知る。大自然や生き物の中で、おごり、我欲、自信のようなものが打ち砕かれ、どうしようもない無力感に出会い、闘うことがロケの本質なのだ。
川風に吹かれる。帰ってきた感がある。なぜボルネオの森に惹かれるのだろう。
(加藤義人)

ナレーション 鶴田 真由

(「ATPワールドツアー500」が放送・延長の場合、放送時間が変更または休止になる可能性があります。)

P&D

加藤 義人

制作P

日髙 正吾

撮影

吉田  誠
新垣 直哉
葛原 圭人

コーディネーター

野村  宏

動物コメンタリー

坂東  元