長谷川町子没後30年スペシャル「彩りとことば」-時を超えて-
「時を超えて“ことば”が届く日」
今年の正月、静かに母が逝った。実家の整理をしていると何冊もの家計簿が出てきた。青い万年筆でびっしりと食材や日用品の買い物の量や金額が手書きの文字で並んでいる。頁をめくるとそれら日々の営みに加えて、所々、欄外に走り書きが見える。
「お父さん、Yシャツクリーニング2枚」、「義人、走る」「よかった、よかった」…。
家計簿は家族の記録であり母にとって、もう一つの日記だったに違いない。世は断捨離ブームの中、残しておく大切さもあるのだと思い知り、しばし、遺品整理の山を前に手がとまり、古びた文字に読みふける。止まっていた古い時計の針が動き出すような気がした。
長谷川町子さんが旅立ってから30年になる。
美術館はしっかりと、長谷川町子さんが生前、個人的に描いていた「絵画」「陶芸」、そして日記など手書きの資料を丁寧に保存されていた。素晴らしい仕事だと敬服する。
その中には、町子さんの走り書きもあった。銀行のメモ帳に備忘録のように、ふと思いついた気持ちを書き綴っていた。手書きの文字は言葉の意味だけではなく、書いた人の感情のありようが表われている。それらを丹念に読み進めていくことから制作をはじめた。
「サザエさん」はよく知っているけど長谷川町子は知らない。
そう、正直に口にされた波瑠さんに番組の案内人をお願いした。番組案内人やナビゲーターは、豊富な知識と知見で視聴者をリードしながら、進行することが多い。だが、今回は違う。番組が進むにつれて、波瑠さんも多くの作品に触れ、知らなかった事実と向き合ううちに稀代な天才漫画家、長谷川町子、その肖像が浮かび、いつのまにか昭和の激動を疾走した一人の女性表現者の人生が見えてくるという仕掛けだ。そして私はアメリカ。ワシントンDCへ飛んだ。そこには、75年の時を越えて町子さんの大切な生きた証を求めて。
(総合演出 加藤 義人)
案内人 波瑠
インタビュー出演 イッセー尾形 ほか
ナレーション 伊藤利尋(フジテレビアナウンサー)
総合演出・P
加藤義人
制作P
取材
田中由美
鮫嶋杏菜
海外コーディネート
吉川菜津
撮影
吉田誠
加藤義人
協力
長谷川町子美術館
川口淳二 橋本野乃子
編成担当
宗像孝(BSフジ)
広報
倉岡俊輔(BSフジ)
P
情野誠人(フジテレビ)