極上美の饗宴「追跡!幻のカラヴァッジョ名画 深い闇と激しい光の秘密

極上美の饗宴「追跡!幻のカラヴァッジョ名画 深い闇と激しい光の秘密

「極上美の饗宴」 で放送される番組の一本。
西洋美術最大の巨匠・カラヴァッジオ。そのイタリア人天才画家が描き400年も行方知れずだった「キリストの捕縛」という傑作絵画を400年ぶりにイタリアの女子大生が発見した。しかもイタリアを遠く離れたアイルランドで。その発見までの軌跡を追いながら、カラヴァッジオ絵画の魅力と、波乱に満ちた彼の生涯に迫る。

二つの顔を持つ男カラヴァッジョ
彼の事を人は―――「すぐに腹をたてる気難しい男だった。狭量で、よこしまで、ねたみ深く、意地悪で、喧嘩早く、路上でいさかいを起こす輩で、その上殺人犯で、たぶんホモセクシャルだった。彼は多大な才能に恵まれていたが、途方もない変わり者だった!」と言う。そうしてもう一つの顔は、天才画家。400年前に描かれ、いつしか歴史の闇に葬られた『キリストの捕縛』。その発見の旅の終着点こそ、この最後の自画像である。この画の中に二つの顔を持つ男の謎の答えがあった! (中谷直哉)


「極上美の饗宴~カラヴァッジオ~」
取材ノート・4人の注目人物。


■フェラーラ大学のフランチェスカ教授

 24歳の女子大生のときに「キリストの捕縛」を再発見した人物。
 取材のその日、約束の時間に「あと五分でつきます」という連絡がフランチェスカ教授から入る。イタリア時間を生きる彼女は、なんとその1時間後に登場。彼女の5分は1時間である。取材した美術館はその日、開館1時間まえの9時から取材のために開けてもらい開館までに取材を終わらせる段取りだったのに、彼女が登場したのは「あと5分」で10時過ぎ。10時の開館を待っていた一般の観光客がカラヴァッジョの展示室への入場を待たされるはめになった。


■古文書を発掘した場所、マッティ家の末裔

 フランチェスカ教授は、20年ぶりに「マッティ家」の過去帳を見つけた古文書蔵へ向かう。しかし現在、マッティ家は財産争いでもめており、事前の取材申し込みでは敷地のなかにすら入れないといわれていた。中に入れなくても外観だけでも撮影しようとマッティ家まで行ってみたら、たまたま、マッティ家の末裔の方がおり、その方の好意で敷地の中を案内してもらうことができた。しかし肝心の「古文書蔵」は、財産争いのために鍵がなく、入ることができなかった。


■修復士ベネデッティ

 この番組のリサーチ段階で参考にした「消えたカラヴァッジョ(ジョナサン・ハー著)」という本でこの人物を知り、取材をお願いしたがよい返事がなかなかもらえず、出演すら危ぶまれたことがあった。「キリストの捕縛」の存在を突き止めたフランチェスカとその絵を修復したベネデッティの2人、両方に話を聞きたかった取材班は、コーディネーターと根気よく交渉を重ね、出演の了解を得る。アイルランドに住んでいたイタリア人の彼はリタイアしてフィレンツェに戻っていた。いざ本人に会ってみると、大変紳士的な人物。実はベネデッティさんは、その「消えたカラヴァジオ」という本について不信感があった。
その本で書かれていることは自分の考えていることと違っていたからだ。その本をベースにした取材依頼には不信感を抱いていたのだ。

■ダブリンナショナルギャラリーの館長

 その人も、我々取材班が何を聞くのか、他に誰を取材しているのか、出演交渉のときから執拗に聞いてきていた。粘り強い交渉の結果、取材許可が下り、ご本人にインタビューをすることができた。そのとき、件の本「消えたカラヴァッジオ」をベースにさまざまな質問をした際、その内容がことごとく違っていることがわかった。その「消えたカラヴァッジオ」の作者は、一度もアイルランドに来たこともなく、アイルランドにいた関係者にまったく取材をしないでこの本を(ほぼ想像で)書いていたのだ。実はこの本はアメリカでは刊行されたが、イギリス・アイルランドでは発売されていないのだった。

今回取材してわかったのは、「ひとつの事だけを鵜呑みにしない」ということだった。


ナレーション

井上二郎

P&総合演出

中谷直哉

P&CAM

鈴木淳

制作P

八幡麻衣子

CAM

丸山純

VE

大谷英夫

構成

冨田紀子

編集

齊藤佳子

音効

細見浩三

音効

細見浩三