NHKハイビジョン特集 日本最大の国宝絵巻 法然上人絵伝
「善人なおもて往生す。いわんや悪人をや」…この金言を、ずっと親鸞のものだと思っていました。でも実は法然上人のほうがオリジナルだったとは。
中世仏教のスーパースターといえば親鸞や日蓮ですが、実は法然こそ、日本の仏教に大転換をもたらした真のアヴァンギャルドだったのです。
どうして法然は革命的な宗教者となったのか?番組をご覧になればよく解りますが、「そんなの知っている」という方も、彼の生涯を描いた「法然上人絵伝」(=日本最大の絵巻物!)を読むプロセスを楽しめます。なんといってもナビゲーターは松岡正剛氏、ディレクターは岸枢宇己ですから。
法然の今日的な意義は松岡氏にたっぷり語って頂くとして、プロデューサーとしては、すべての「悪人」にこの番組を捧げたいと思います。
「悪人」とは、煩悩にまみれ、欲、怒り、妬み、迷いだらけのダメ人間のことです。法然はそれを「凡夫」と呼びますが、法然も、自らを「凡夫」だと自覚しています。謙遜のポーズではなく、心からの自覚なので、善人への道が啓けます。
中世の「悪人」とは、例えば武士でした。法然も武家の生まれです。法然の浄土宗は、いわば武士の思想でした。その昔、聖武天皇が目指した「鎮護仏教」と、のちに徳川家康のモットーとなる「厭離穢土、欣求浄土」を結ぶもの。つまり、奈良時代と戦国時代を結ぶ者こそ、法然なのです(これには黒田俊雄氏の批判もありますが)。
「未来は、また法然に救われるかもしれない」。松岡正剛氏にそこまで言わしめる人物。その思想と生涯を見つめます。
(高橋才也)