年に一度の放送をずっと楽しみにしている番組がある。TBSの正月恒例「あんたの夢をかなえたろかSP」だ。テレビが知恵と力の限りを尽くし、誰かをあり得ないくらい喜ばせる。しかもただ面白いだけじゃなく、記憶にも気持ちにも残る。琴線に触れるということなのか…。こんなことテレビにしかできないエンタメだと毎年思い知らされる。今年で30年という長さにも驚いたが、もっと驚いたのは、かつて「菅田将暉と共学ライフを満喫したい！」というかなりアホな夢を叶えてもらった女子高生がいま、その番組のADとして働いていることだった。彼女がこの業界を選んだ理由に、番組がどこまで影響していたかはわからない。でも少なくとも彼女が大人になるまで番組が続いていたからこその“再会”だったことは間違いない。
ついでにもう一つ、これもTBSの大型番組「SASUKE」での1コマ。かつて完全制覇を成し遂げたレジェンドの息子さんが、14歳でのステージクリアという最年少記録を打ち立てた。幼少期から漁師の父親がテレビ番組に挑戦する姿を彼はどんな風に見ていたのか…。結果息子は父と同じステージに立ち、父は自分のこと以上に喜びをかみしめていた。番組が長く続くということは、こんな予想外のことが起こるのか…と改めて思った。
この春、サラメシは14年目を迎えます。「SASUKE」や「夢かなえたろか」のようなドラマチックな展開は何もないが、まさかウルルン滞在記を越える日が来るなんて…。2011年、東日本大震災で番組スタートが遅れ、食べるとは？ 働くとは？ テレビとは？ 立ち止まって考える数週間があったことがすべてだと、個人的には思っている。毎回プレビューでディレクター陣が見せてくれる取材は面白い。まだまだこの国には、僕らが知らない面白い仕事と魅力的な働くオトナたちに溢れているおかげで、当分飽きることはなさそうだ。
14年目のサラメシにも、ご期待ください。
（松葉直彦）

【2024年4月から、「サラメシ」の放送時間が変わりました】
毎週木曜　20:15～20:42（関西地方を除く）／毎週日曜18:05～18:32（関西地方のみ）

今月の放送
シーズン14　＃8 「名古屋港の土砂しゅんせつ船▽法政大の「さし飯」教授」
6月6日（木）20:15～20:42＜関西地方を除く＞／6月9日（日）18:05～18:32＜関西地方のみ＞
貨物の取扱量日本一の名古屋港。大型船が航行できるよう海底にたまった土砂を取り除く国土交通省の作業船に密着。平日は２４時間体制で操業しその間は陸に戻らない。乗組員たちのお楽しみは、同乗する料理人が作る３食のまかない▽法政大学の梅崎教授はサラメシの大ファンで、番組の企画「さし飯」を取り入れ大学１、２年生を中心にキャリア教育に役立てている。そんな教授と番組スタッフがさしでランチを食べながら、本音を直撃！

シーズン14　＃9 「自動車整備会社のまかない▽大阪・お弁当の会▽奈良岡朋子」
6月13日（木）20:15～20:42＜関西地方を除く＞／6月16日（日）18:05～18:32＜関西地方のみ＞
三重・四日市の自動車整備会社、週に一度の手作りまかないはボリューム満点ガッツリ丼。亡き夫と長年会社を支えてきた黒田節子さんが７０歳にしてまかない作りを始めた理由とは？▽大阪にある小さなデザイン会社。メンバー３人の「お弁当の会」をのぞき見。先輩デザイナーの健康を心配し、後輩が週に２回野菜たっぷりのお揃い弁当を作ってくれるのですが…▽女優・奈良岡朋子さん。芝居に向き合い続けた人生を支えた味。

シーズン14　＃10 「まるごと愛媛SPみかん・闘牛・坊っちゃん列車に五七五」
6月20日（木）20:15～20:42＜関西地方を除く＞／6月23日（日）18:05～18:32＜関西地方のみ＞
松山市民の足、市内電車。土日祝日には明治時代の汽車を再現した「坊っちゃん列車」が運行され観光客にも大人気。地元愛あふれる乗務員たちをお弁当ハンター阿部了さんが取材▽かんきつ類の生産量日本一。みかん栽培を始め８年になる若者の奮闘と好物の煮魚ランチ▽伝統の宇和島闘牛に魅せられ、建設会社で働きながら闘牛に打ち込む“牛主”社員▽正岡子規ゆかりの“俳都”松山で「ランチ５７５」あなたのランチを１７文字で。