食彩の王国 2015年5月

食彩の王国 2015年5月

 子供の頃から、からし菜の漬物を食べると春が来たなぁと感じる。芽かぶのぬめりもいいし、味噌汁に入れたハバ海苔の香りも捨てがたいが、やっぱりからし菜にはかなわない。白いご飯に釜揚げシラスを載せて、その上に細かく切ったからし菜を散らして、海苔をちぎって掛ける。そこへ醤油をさっと振れば、即席の「春」どんぶり。一口食べれば、鼻に抜ける海苔の香とともにからし菜の辛味と堅めの歯触り。それを下支えする淡い味わいのシラスと醤油の絶妙なマッチング。思わず「あー!」と声を上げたくなる。
 昨年漬けた白菜の発酵がすすみ、しんなりとして酸味が増す。これはまた古漬けの味わいで滋味深い。塩出しして、細かく切って鰹節を掛けて食べるのもおいしい。しかし、そこへ彗星のように現れたからし菜に目が覚める。ああ、春だ。子供たちに「春」どんぶりを勧めても、「ご飯に色々な物を載せるのはきたなくてやだ」と言ってたのに、いつの間にか父親と同じことをしているから可笑しい。
 旬の概念を失って久しいが、旬を意識することは楽しい。「食彩の王国」は、旬の食材の物語を探して日本中を旅しています。
(土橋正道)

語り

薬師丸ひろ子

放送予定

    OA日        テーマ        担 当

#576 5月 2日 :    初がつお       前夷里枝
#577 5月 9日 :    桜えび       ※VIVIA 
#578 5月16日 :    金目鯛       ※VIVIA
#579 5月23日 :    菜種油        三田香織
#580 5月30日 :    出汁        ※VIVIA

5月のテレビマンユニオン担当回は・・・ 

《初がつお》 「土佐の一本釣り!!黒潮の使者 初がつお」

  旬をむかえた「初がつお」が主役です。
無国籍料理のパイオニア・熊谷喜八。喜八さんは、実は江戸っ子。
毎年、初がつおの季節を待ちこがれています。KIHACHI流、かつおのスペシャリテとは!?
“鰹乃國”高知県中土佐町。漫画「土佐の一本釣り」で一躍全国に知れ渡りました。
江戸時代にはかつお一本釣りが始まっていて、今もかつおが暮らしの支えになっています。
ここでは、端午の節句のお祝いにも、コイノボリではなくカツオノボリを上げるほど。
カツオを丸ごと1匹味わいつくす料理が、食卓を彩ります。
 日本人を魅了してきた「初がつお」の魅力に迫ります。
(二階堂 茜)


《菜種油》 

 今回の主役は菜種油です。
油といえば、食材を鍋やフライパンに焦げ付かせないようにする潤滑剤の役割で
ただ便利に使っていたイメージしかありませんよね。
 しかし、岩手から届いた国産で手絞りの菜種油はまず見た目から驚かせてくれます。
黄金色に輝く液体。サラダ油のような薄い色を想像していたのに…。
ふたを開けた瞬間に広がる、菜畑のようなさわやかで香ばしい香り! 
ついつい、においにそそられて、ふたに付いた油を指で取ってなめてしまうという、
人生初の体験をしてしまいました。
 現在の精製された油に慣れすぎて知りませんでしたが、実は菜種油はとんでもない
旨味を秘めた調味料だったのです。どんな料理に変身するのか、お楽しみに!
(徳丸 あす香)           

プロデューサー

土橋正道

ディレクター

田中由美
阿部賢実
三田香織
下高呂佳子
植田裕久
徳丸あす香
前夷里枝

リサーチ

北口由子

アシスタントディレクター

二階堂茜