食彩の王国 2015年11月
スペイン政府の招待で、バスク地方の美食ツァーに行ってきた。バスクは、軽食で酒を飲むバルの文化。タパス(軽食)のもとは、串に刺したオードブルだったのでピンチョ(串)と呼ばれ、趣向を凝らしたものがカウンターに10数種類も並んでいる。それを肴に、瓶を高くかざしてグラスに注ぐチャコリという白ワインを立ち飲みする。日本大使館勤務だったバスク人が案内してくれたので、バルをはしごして飛び切り旨いものを連続して食べた。例えばフォアグラのムースが500円くらいで食べられる。港町なので海鮮も最高。エビやカニをどう工夫すればこの味が出るのか、魔法にかかったような口福。大航海時代に船員を輩出したバスクには、旨いものを作って食べて長い船旅の不満を解消してきたという伝統がある。特に、干しダラを使った男の料理は絶品だった。さて一番旨かったものは何かと言えば、放牧で育てられた牛をただ焼いて岩塩をまぶしたもの。歯ごたえがあり、噛めば噛むほどしみじみとした味わいがあった。きちんと食材を選んで、シンプルに料理すれば美味しい。バスクの街角で、スロー・フードの精神を見つめ直した。「食彩の王国」は、この10月で13年目に入る。
(土橋正道)
語り
薬師丸ひろ子
放送予定
OA日 テーマ 担 当
#603 11月 7日 : 秋サバ 永田暁児
#604 11月14日 : 山 芋 ※VIVIA
#605 11月21日 : 鮭 前夷里枝
#606 11月28日 : ゴボウ ※VIVIA
11月のテレビマンユニオン 担当回は・・・
≪秋サバ≫ 『龍馬も愛した黒潮の贈りもの!秋サバ物語』
海のウサイン・ボルトの異名を持つ魚が、土佐にいます。
とにかく早いのです。足が。
「サバの生き腐れ」なんて言葉があるように、サバは鮮度が落ちやすい魚の代表格。しかし、そんな不名誉を覆し全国においしいサバを届けるため、漁協の男が自らの足でこんな走法を編み出しました。それが、サバダッシュです。
「世の既成概念を破るというのが、真の仕事である」―坂本龍馬
しゃも鍋でも鰹のタタキでもなく、何を隠そう龍馬の好物はサバでした。東京で新鮮なサバを刺身で食べられる。土佐の英雄の意志を継いだ漁師たちは、“清水さば”というブランドを打ち立てて、見事、既成概念を打ち破ったのです。さばにかける海の男たちの熱い思い、とくとご覧ください!
(鴨下 満)
≪鮭≫
日本人の食卓に欠かせない、鮭。
しかし、今回訪れた新潟県の村上市ほど、鮭と隣り合わせで生活している町があるでしょうか。夕飯で子供たちが奪い合うのは、“どんびこ”と言われる鮭の心臓。伝統的な鮭漁のおじいちゃんは、「鮭と戦争している」と。集落のおばあちゃんにとっては、「神様と同じような存在」。さらに、1年かけて鮭を発酵させる伝統料理、“酒びたし”を作っているご主人は、「うちでは人間より鮭の方が偉い」と言われて育ったそうです。
そんな鮭にとりつかれた料理人が、東京にもいました。世田谷区にある鮭専門店。鮭好きもうなる絶品の鮭定食が自慢のオーナーに、鮭の魅力をずばり聞いたところ、「顔がかわいい」とのことでした。
なんとも奥が深い、鮭の世界。必見です。
(鴨下 満)
プロデューサー
土橋正道
ディレクター
徳丸あす香
前夷里枝
植田裕久
橋本倫
永田暁児
田中由美
三田香織
阿部賢実
岸元美江
リサーチ
北口由子
アシスタントディレクター
細村舞衣
鴨下満