遠くへ行きたい 2014年4月放送分
永六輔さん 毎日芸術賞受賞にあたって
永六輔さん(80歳)が、毎日芸術賞の特別賞を受賞した。受賞理由は、旅番組「遠くへ行きたい」など、長年にわたるテレビ・ラジオへの貢献。
「遠くへ行きたい」はテレビマンユニオンが設立して半年後に、讀賣テレビの特段の配慮によってもたらされた初めてのレギュラー番組だ。旧国鉄のディスカバー・ジャパンのキャンペーンの一環だったが、永六輔さんが44年も続く番組の礎を作った。テーマ・ソングの作詞も永さん、初期は旅する人も永さんだった。「横町を曲がれば、旅がはじまる」というのは永さんの名言だが、旅する人のドキュメンタリーを通して日本を再発見する番組として長く親しまれてきた。
ところで、永さんは横町は曲がるが、信念は曲げない人。受賞の挨拶も奮ってた。
「こういう賞は、大変名誉でありがたいことなので喜んで頂きます。ですが、僕はほかにも頂きたい賞があります。僕は尺貫法復権に力を尽くしました。日本の建築でも、テレビ、映画、舞台の美術、手仕事もすべて尺で計ります。それを禁止するのは日本の文化の否定じゃないですか。応援してくれたのは、小沢昭一さんです。鯨尺を持って警察に出頭もしました。出来ることは何でもして頑張ったのです。その結果、伝統的業種では例外的に使用できるようになりました。そして、多くの職人さんたちに感謝されました。尺貫法復権に尽くしたことで、どなたか僕に賞をくださいませんか」
これは永さんにしかできない挨拶。永さんは、江戸の文化や風俗を生活文化として再評価したり、在野の芸人を広く紹介したり、多くの人が目を向けないところに独特の視点で光を当ててきた。パーキンソン病や前立腺癌と闘病中であり、車椅子でしか移動できないが、自分を必要としているところへは出かけて行って力を尽くす。長年一緒に仕事をさせてもらった同志としては、今も前を向いて生きる永さんを頼もしく思う。
「遠くへ行きたい」は、永さんのように様々な旅人が豊かな番組に育ててきた。表現のスタイルはテレビ状況の変化によって変わっていくが、これからも番組のコンセプトは大切にしていきたい。
(土橋正道)
ゼネラルプロデューサー
村田 亨
プロデューサー
土橋正道
制作プロデューサー
森 明子