遠くへ行きたい 2014年12月の放送
森健一ディレクター78歳が、第2231回放送「ピーコの愛知篇」の演出をした。放送当初からレギュラー・メンバーだったが、数年前に体調を崩して遠ざかり、気力を奮い起こしてもう一度演出に挑んだのだ。テーマは以前から温めていた「三河の手筒花火」。車椅子で現場を仕切り、編集も最後までやりとげ、ナレーション録りも見届けた。テレビジョンの演出としては、最高齢じゃないのかな。
かつて西武球団にいた野村克也捕手が、1980年に達成した史上初の「3000試合出場」。その時の喜びと決意の声は「生涯一捕手!」。やがてその言葉は、一つのことにひたむきな人の代名詞として流行語になった。以来、森さんの口癖は「生涯一ディレクター!」。そんな森さんの演出を一度見てみたい!と、ベテラン・ディレクターが車椅子を押し、アシスタントも森組出身のディレクター。ところが、森さんのもう一つの口癖は、「ディレクターは現場の帽子のようなもの。(いるようでいないのがいい)」。さて、現場は狐につままれたまま、素晴らしい森節炸裂の番組が完成。三河の手筒花火がひときわ美しく、男らしく打ち上がった。目指せ、3000試合出場!
(森健一ディレクターは番組仕上げの2日後に再入院し、放送2週間後に逝去しました。合掌)
土橋正道