遠くへ行きたい 2015年4月の放送
「遠くへ行きたい」最多出演の俳優・渡辺文雄さんに、ロケ中にこんなことを言われたことがある。「つちはし、一日ひとつ花の名前を覚えろ。そうすると1年で365個も覚えられるぞ。覚えれば、ああ、あの花の咲く季節になったなと自然を身近に感じて、人生が豊かになる」。もともと自然の中で遊ぶのが好きだったので、季節感のあれこれは結構知ってたつもりだ。しかし、渡辺さんにそう言われてからは尚の事、あらゆることを競争してクイズのような旅をした。聞こえてきた鳥の声でその鳥を当てる。拾った一枚の羽はどの鳥のものか。このセミの抜け殻は、何ゼミのものか。落ち葉の形から木の名前を当てる。クモの巣の形、蝶の名前と果てしない。つまり、人の目は自分が好きな物や気になることを探して見ているということだろう。旅の形も人それぞれだが、共通するのは日常から離れて自分の好きな時間に浸れるということだ。「遠くへ行きたい」は旅人、季節、旅先が順列組み合わせのように変化するのでいつも新鮮だ。
渡辺さんは可愛らしい女性に会うと、いつも同じことを言っていた。「一日ひとつ花の名前を覚えたら、もっといい女になれるよ」。あらら、それって口説いてるんじゃないの。
(土橋正道)