遠くへ行きたい 2015年9月の放送
旅行に行ってもスマホは便利で、行きたい場所の地図、見逃しがちなイベントや、自分に合った食事の店を見つけ出すことなどで役に立つ。しかし、それでは東京に居るのも同じで、旅は全く別の感性で自分を感じるのが目的ではないか。「歩く、見る、聞く」が世界を広げてくれる。SNSでは、繋がっている相手を無視できないという強迫観念からも逃れられない。暮らしが便利になればなるほど、実は、旅も不自由になっているのではないか。1990年代にネット環境が恐ろしい程の速さで世の中に広がったが、「男はあらゆることから自由になりたいのだ」と嘯いて携帯電話も持たなかった。最近は仕方なくガラケーと呼ばれる携帯を持っているが、使う機能は電話だけ。そして、メールはオフィスのデスクトップと決めている。カメラ機能も使わない。記録は記憶の代償行為であり、記録が先行すると記憶を失う。そんな中で、旅番組はどう進化すればいいのだろう。点の情報では、あらゆる別のツールに敵わない。線でつなげて、豊かな感性を復権するのが最初の一歩だ。先ず、鉄道に乗ってゆっくり考えようね。
「遠くへ行きたい」はこの10月で、46年目に突入する。
(土橋正道)