田中徹

ディレクター

田中徹

Tanaka Thoru

テレビの最初の仕事は二十歳になった小泉今日子主演・大映TV「少女に何が起ったか」(増村保造監督)のセカンド助監督から。映画もかじって日活ロマンポルノ(小沼勝監督)や曽根中生監督が失踪する直前の彼の最後の作品となった「フライング飛翔」を経てユニオンへ。きっかけは鶴野徹太郎さんのプロデューサー作品「大相撲特番」、一日限りのロケ運転手でした。最初のディレクターは正月三時間特番「日本列島四季物語」の「世界最強オオスズメバチの脅威の生態」。以後、富士山洞窟探検や絶壁・男女群島無人島上陸作戦、北アルプス山岳遭難レスキュー、アメリカ竜巻取材、「神々の詩」ではタイガーシャークが集まる“ミッドウエイ環礁コアホウドリ”など、保険の対象にはならないような危険なロケが多く、保険手続きの担当者からは“デスク泣かせのトオル”と言われました。
以降、おとなしくなって「疲労回復TV」「作法の極意」「ウルルン」「人間劇場」「21世紀に残したい風景」「そして音楽が始まる」「お宝TV」「遠くへ行きたい」「食彩の王国」「素敵な宇宙船地球号」「魂のタキ火」「オーストラリア縦断3,000キロ ソーラーカーレース」を8年間に4本制作。また、日本人で初めて、UNHCRの高等弁務官として活躍した緒方貞子さんの知恵を探る「知恵泉」を演出。

テレビはバラエテイ番組もドキュメンタリーやドラマも、“今”を“いかに切り取る”かが勝負と思い、番組制作を牽引する“発想実現の原動力”は“徹底したリサーチ力”にあると考えています。
例えば・・・ 日米“トップガン”最前線のドキュメンタリー企画作成時には、渋谷区中央図書館館長の紹介状を取り付けて防衛大学の空自専門の書庫にこもったり、ある偉人の偉業発意の原点がアメリカの大学院の博士論文にあると知ると、分厚く濃密な論文を読み取ったりと、その執念深さから“リサーチャー泣かせのトオル”と言われる事もありました。
そんな僕が少年時代、テレビに釘付けとなったドラマの主人公の言葉が記憶にあります。
“運は天にあり、鎧は胸にあり、手柄は足にあり”(NHK大河ドラマ「天と地と」上杉謙信)
自分が発想した“道”は四方に耳を傾け、みずからの足で切り開く。どんなに困難でも目と耳を研ぎ澄ませ発想の実現をめざす。僕はそれを信条としています。