みなさんは覚えていますか…、この番組のオープニングをこんな一言ではじめました。「赤とんぼ」「紅葉」「たきび」…そんな童謡や唱歌を聞くと、一緒に歌った友だちのこと、まわりの景色、ぬくもり、時には においまでも 鮮やかに思い出すことがあります。たったひとつの歌が、とおい思い出をひも解くのですから、歌はほんとうに不思議です。
　そんな歌の魅力を「うたのふるさと」を訪ね、そこに暮らす方々に歌っていただくことにしました。うたのふるさと？ それは、うたの原風景となった地。たとえば「赤とんぼ」なら作詞をした三木露風の故郷 兵庫県たつの市へ。「紅葉」なら作詞者 高野辰之の生まれ故郷 長野県中野市の秋の景色へ。歌にうたわれた風景を探します。うれしかったのは、その地の皆さんが、自分たちのもっとも大切な歌として、それらの童謡を歌い継いでいることでした。
　番組にあたたかな心を吹き込んでくださったのは、語りの小宮悦子さんです。数々の報道番組などで「情報」を的確に伝えてきた小宮さんが、今回は番組の「こころ」を作ります。みなさんは覚えていますか…。冒頭に書いたこのナレーションを読んでもらったとき、番組の「こころ」ができあがりました。
　みなさんの心にしずかに届く音楽番組をつくりつづけたいと思います。
（中村哲夫）